2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

48億の妄想

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月30日はこちらです。 『介護入門』 モブ・ノリオ著 文春文庫刊 狂う真似から始めることと芯から狂うことの境目はどのあたりから曖昧になるのだろう?狂ってる奴が唯一認めたがらないのは、己が救い難く狂ってるってこと…

雨晴れて月は朦朧の夜

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月29日はこちらです。 『ベスト小説ランド1987 2』日本文芸家協会編 角川書店刊 最初にそれを見た時、ぼくは、伊沢良江が小さな人形か何かを、自分の左肩に乗せているのかと思った。 身長が二〇センチくらいの、小さな裸…

鉄騎兵、跳んだ

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月27日はこちらです。 『振り返れば地平線』佐々木譲著 集英社文庫刊 ゴーグルの隅に、水滴がコツンとはじける。 時間を置いてもうひとつ。 ぼくは道の先に据えた視線を空へと振った。国道235の行く手の空には、低くグレ…

黙阿弥オペラ

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月26日はこちらです。 『パロディ志願』井上ひさし著 中央公論社刊 まず、パロディは鏡のようなものではないだろうかというのが、わたしの最初の思いつきである。それも、ただの鏡ではなく正確に歪んだ鏡ではないだろう…

Mr.クイン

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月25日はこちらです。 『わが名はレッド』シェイマス・スミス著 鈴木恵訳 ハヤカワ文庫刊 おれはやつの口を封じる必要があった。 すばやく身を乗りだし、やつの頭を気絶するほど強くハンドルにたたきつけて、座席の後ろ…

世紀末の街角

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月24日はこちらです。『ヨーロッパの誘惑』海野弘著 丸善ライブラリー刊 エドワーディアンのライフ・スタイルは、快楽追求であった。肉体的な喜びといえば、セックスや着飾ることがあるが、まず食べることであった。おい…

泣き出した女

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月23日はこちらです。 『賢い人の愚かな犯罪』佐野洋著 文春文庫刊 そのうち千はあることに気がついた。 母親たちは、揃って上気したような顔で、誇らしげな視線を、それぞれ、自分のこどもに注ぎ、ときどき、思い出した…

ペガーナの神々

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月22日はこちらです。 『世界の涯の物語』 ロード・ダンセイニ著 中野善夫・中村融・安野玲・吉村満美子訳 河出文庫刊 星々から凍てつく風が吹きおろす。アクロニオンの道は初めは危険な登りだったが、ほどなく断崖から…

太鼓叩きはなぜ笑う

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月20日はこちらです。 『死のある風景』鮎川哲也著 角川文庫刊 春日節子らしい屍体が発見されたという知らせがはいったとき、百済木忠雄はちょうど食事をしているところだった。めしを止めてすぐゆきますと答え、果して…

幻影

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月19日はこちらです。『死角』ビル・プロンジーニ著 高見浩訳 新潮文庫刊 北二十五番街二千五百十九番地に建っていたのは、広々とした鮮やかな緑の芝生で隣家と隔てられた、堂々たるベージュ色の化粧漆喰塗りの邸宅であ…

広場の孤独

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月18日はこちらです。 『歴史と運命』堀田善衛著 講談社刊 おれはいったいどういうわけがあって現に存在してい、またどういうわけあいのために現に存在しているのだろう、という疑問。 こういう疑問が、二六時中とは義理…

思考する物語

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月17日はこちらです。 『魔術師大全』森下一仁著 双葉社刊 魔術は科学技術にとって代わられたといっていいのではないだろうか。 にもかかわらず、現代でも魔術に対する興味や憧れが消えたわけではない。場合によっては、…

御松茸騒動

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月16日はこちらです。 『松茸ハント』藤井豊一著 築地書館刊 国産ものの松茸といえば皆さんの認識はどのようなものだろうか。 国産ものなどと呼ぶのは私達の世代にとって甚だ違和感があるのだが、現在は韓国産をはじめ、…

第三の嘘

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月15日はこちらです。 『どちらでもいい』アゴタ・クリストフ著 堀茂樹訳 早川書房刊 さて、あるとき、その国語教師は私の顔めがけてチョークを投げつけた。いつものように朝からいねむりしてきた私を起こそうというのだ…

丘の上の邂逅

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月13日はこちらです。 『自我の構図』三浦綾子著 光文社刊 なんの葉か、地面一面に黄色に散り続けている。右手の崖下のどうどうというひびく川の上にも、そして笹薮にも、木の葉が絶え間なくひらひらと、風もないのに舞…

流跡

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月12日はこちらです。 『きことわ』朝吹真理子著 新潮社刊 夏の明け方、タッパーにつめられたばかりの、おにぎり、叉焼、アスパラ、はちみつの味をきかせた卵焼き。それらがテーブルにふたつづつならんで置かれていた。…

鞭と鎖の帝国

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月11日はこちらです。 『ホメイニ暗殺計画』黒沢敏彦訳 徳間書店刊 街はあいかわらず人の群でごったがえしていた。革命後にモサデク博士の名をとって改名した旧バーレビ通りやフェルドゥシー通りには、いつものようにぎ…

アメリカを見よ

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月10日はこちらです。 『アメリカ合州国』本多勝一著 朝日新聞社刊 ハーレムの町は、外観を写真で見る限り、けっこう立派に見える。とくに日本では、コンクリートやレンガの建築なら何でも木造よりは立派だろうと考えが…

宗教都市と前衛都市

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月9日はこちらです。 『百寺巡礼 第三巻 京都1』五木寛之著 講談社刊 京都はたんに古い街ではなく、つねに新しいものを大胆に取り入れ、その取り入れたものを大事に守りつづけるために、結果として古く見えるのではない…

カルトの子

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月6日はこちらです。 『洗脳の楽園 ヤマギシ会という悲劇』米本和宏著 情報センター出版局刊 それでも、それだけのことであったなら、ヤマギシへの関心は次第に薄れていったろう。事実、時間が経つにつれ農場の光景も村…

人間小唄

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月5日はこちらです。 『実録・外道の条件』町田康著 メディアファクトリー刊 コネ・人脈。底辺の乞食エンターテイナーにとって実に魅力的な言葉である。報われぬ者は恨みを抱きがちである。散々に努力・精進を重ねている…

李朝残影

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月4日はこちらです。 『 韓国のやきもの 3 李朝』沈寿官 鄭良謨 文 久光 良城 写真 淡交社刊 李朝の名品には作者の銘はない。その造られた時代や場所も、物によっては評論家の意見が極端に分かれていて、曖昧模糊として…

ふらんす怪談

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月3日はこちらです。 『石、紙、鋏』アンリ・トロワイヤ著 小笠原豊樹訳 草思社刊 コリアンドルは、広場に面した新しいマンションに住んでいた。積み重なっている数限りない窓々。だが、ドアから一歩室内に入れば、そこ…

探検家の憂鬱

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月2日はこちらです。 『アグルーカの行方』角幡唯介著 集英社刊 風もない青空の中を太陽だけがぎらぎらと照りつけていた。 氷脈の先には再び広い雪原が広がっていた。私たちは先を急いだ。この雪原がラッセル島まで続い…

自由人の祈り

復活!!!今日のおすすめ本。2017年9月1日はこちらです。 『僕は模造人間』島田雅彦著 新潮社刊 彼女の冷淡さは何も僕だけに向けられたものではなかった。どうやら、「男なんてみんな餓鬼よ」といった意識が彼女の心に植わっていたようである。女たることの…