自由人の祈り

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年9月1日はこちらです。


『僕は模造人間』

島田雅彦著 新潮社刊


 彼女の冷淡さは何も僕だけに向けられたものではなかった。どうやら、

「男なんてみんな餓鬼よ」といった意識が彼女の心に植わっていたようである。

女たることの自我に目覚め過ぎているがゆえに奇妙に男らしいランコは、

僕をだらしなくて愚鈍な男だと思いたくてしようがないふしがあった。

彼女の高慢さに裏付けがあったことは認める。校内学力テストでは同学年の

四百人中常に五番以内だった。ちなみに僕は五十番がせいぜいだった。

また、走らせれば女でランコに敵う者はいなかった。春の体育祭で

彼女が見せた走りっぷりは空気を刃物で切り裂くようだsった。

(中略)

 僕は彼女に恋をする以前に嫉妬し、嫉妬する以前に敬遠していた。

それは梓の場合と同じであった。僕はロックンロールとセールスマンと

牛乳と健康な優等生が大嫌いなのだ。この苦手なものを克服しようと

自虐的に努力することが恋愛だと僕は信じていた。ランコの前では僕は

交尾した後の雄かまきりだ。しかし、「僕を食べないでくれ」と必死に

雌かまきりを説得しながら、「何とか雌かまきりを食ってしまえないか」

と策をめぐらすのが亜久間の習性だった。

(本文より)


こちらは現在絶版となっております。

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日々のおすすめ本から、

お気にいりの一冊が見つかりますように。

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