探検家の憂鬱

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年9月2日はこちらです。


『アグルーカの行方』

角幡唯介著 集英社


 風もない青空の中を太陽だけがぎらぎらと照りつけていた。

 氷脈の先には再び広い雪原が広がっていた。私たちは先を急いだ。

この雪原がラッセル島まで続いているように。そう祈る気持ちで先を進んだ。

だが、その願いもむなしく、周囲には次第に巨大氷の乱氷が現れ始めた。

 乱氷は私たちを取り囲むようにしながら、その密度を徐々に増していった。

進めば進むほど周りの氷のブロックは巨大になり、氷同士の間隔も密に

なっていった。そのうち乱氷には隙間がなくいなり、高さ十メートル近くに

達する山があちこちに現れ始めた。

(中略)

「レベル五の乱氷だな」

 荻田が言った。最悪の乱氷という意味らしい。だが彼もそのレベル五とやらの

乱氷を見たのは、これが初めてだという。

 惨状をきたした乱表の中を、真っ白な雪原が細い道となり、ラッセル島の方角に

向かって続いていた。なんとか雪原が消えないようにと心の中で祈りながら、

私たちは南に進んだ。しかし、先ほどの不安が的中することは、もはや

避けられそうもなかった。雪原は三車線の道路が二車線に、二車線が一車線に

変わるように次第に狭まっていき、そしてついに森の小径のように

か細くなってしまった。そして最後は恐れていたレベル五とやらの乱氷に

吸収されてしまったのだ。

 もはやこの絶望的な乱氷に突入する他に選択肢はなかった。

(本文より)


こちらは初版本となっております。

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お気にいりの一冊が見つかりますように。

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