黙阿弥オペラ

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年9月26日はこちらです。


『パロディ志願』

井上ひさし著 中央公論社


 まず、パロディは鏡のようなものではないだろうかというのが、わたしの最初の

思いつきである。それも、ただの鏡ではなく正確に歪んだ鏡ではないだろうか。

 正確に歪んだ、という言い方はなんだか変である。「臆病な英雄」

「思わずきれいだなァと言いたくなるような醜女」「まるでもてない女たらし」

「景気のよい大不況」「無害な水爆」「美しい侵略戦争」「金のかからぬ選挙」

「親切な小役人」「無血革命」「知性溢れる芸能週刊誌」「きれいな公害」

などの言い方と同じように矛盾している。しかし、よく考えるとパロディという

コトバは「正確に」「歪んでいる」というふたつの正反対の考え方を同時に

内包させていないと成り立たないのである。

 鏡は、ものの形を、左右とりちがえてではあるが、正確に写し出す。

(むろん、わたしのいっているのは安物の鏡ではなく、ちゃんとした鏡のことだ)

ところがパロディという名の鏡は、ものの形やこころを正確に捉えながら同時に

ものやこころを正確に捉えながら同時にものやこころの癖や長所を誇張し、拡大し、

ねじ曲げ、ふくらまし、つまり歪めて写し出すのである。遊園地などでよく見かける

歪んだ鏡、あれがパロディなのだ。

(中略)

本来の自分の姿と、ひどく歪んだ滑稽な虚像をつけ合わせるとき、人はあまりの

変わりように驚き、にもかかわらずやはりそれは自分そのものであることに感心し、

このふたつの理由で吹き出してしまうのである。

(「パロディ思案」本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。

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