太鼓叩きはなぜ笑う

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年9月20日はこちらです。


『死のある風景』

鮎川哲也著 角川文庫刊


 春日節子らしい屍体が発見されたという知らせがはいったとき、

百済木忠雄はちょうど食事をしているところだった。めしを止めて

すぐゆきますと答え、果してそれから小一時間のちに、彼は幾分

顔の表情をひきしめて、現場にあらわれた。なにぶん場所が試射場に

ちかかったので、米軍側から白人と黒人のMPがやって来て立ち会い、

普段の殺しのときとはまた異なったものものしい雰囲気につつまれていた。

 陽はとうに落ちてしまっている。東の空にのぼった月あかりで、

あたりはほの白くうかび上り、砂丘の稜線はあわい曲線をえがいて

河北潟のほうに消えていた。しかし現場は、米軍側がもち出した

照明灯の光をあびて、不自由を感じない程度の明るさであった。

 百済木があらわれると、それと知って捜査官や新聞記者たちは

鳴りをしずめ、蒼ざめた医師のまるい顔と、あくまで冷静さを失わぬ

いかにも医師らしい動作とに、期待と同情と感嘆のいりまじった

視線をあびせた。

  「辛いでしょうが、どうかしっかりと見て頂きたいのです。

間違ったことをいわれると、捜査の上でとんでもないミスを犯すことに

なるからです」

 一同を代表して、伴富治刑事がいった。

(中略)

 「断っておきますが、自殺や過労死ということは考えられません。

明白にこれは殺人です。射殺されています」

(本文より) 


こちらは現在絶版となっております。

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