幻影

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年9月19日はこちらです。

『死角』

ビル・プロンジーニ著 高見浩訳 新潮文庫


 北二十五番街二千五百十九番地に建っていたのは、広々とした鮮やかな緑の

芝生で隣家と隔てられた、堂々たるベージュ色の化粧漆喰塗りの邸宅であった。

そのスタイルには古いカリフォーニア・スパニッシュ様式の特徴があまりに

濃厚なため、この地がサン・フランシスコではなく、ロス・アンジェルスに

見えるほどだった。赤いタイルの屋根、すべての窓の外に張りだしている

装飾的な鋼鉄製のバルコニー、黒い梁のアーチを備えた前廊、そして、

四色のタイルによるモザイク模様をあしらった壁。道路から通じている

テラス式のアプローチにまで、モザイク・タイルが嵌めこまれている。

(中略)

 玄関の扉の中央には、獅子頭を模した真鍮の大きなノッカーがついていたが、

呼びリンのボタンがあったので、それを押す。屋内でかすかにチャイムの

音が響き、しだいに薄れて静寂にもどった。十秒ほどしてノッカーの上の

覗き窓がひらき、琥珀色の瞳がこちらを見返した。電話で話したのとはちがう

女性の声が、言った。「どなた?」戸別訪問のセールスマンに応対するときの、

あの口調である。

 こちらの名前を伝えて、ニコルズ夫人と面会の約束があるのだ、とつけ加えた。

 一瞬の沈黙があってから、「ああ、あの私立探偵ね」

「ええ、そのとおり」

(本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。

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日々のおすすめ本から、

お気にいりの一冊が見つかりますように。

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