ペガーナの神々

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年9月22日はこちらです。


『世界の涯の物語』
ロード・ダンセイニ著 中野善夫・中村融安野玲・吉村満美子訳
河出文庫


 星々から凍てつく風が吹きおろす。

アクロニオンの道は初めは危険な登りだったが、ほどなく断崖から

獣のねぐらまでおりる平らで広い階段に行きついた。一段目に踏み出した

ちょうどそのとき、〈歓喜の獣〉のとぎれないひとり笑いが聞こえてきた。

 アクロニオンはひるんだ。この陽気さに打ち勝つのはむずかしいのでは

なかろうか。どれほど悲しい歌でも泣かせることはできぬのではなかろうか。

それでも彼は背を向けることなく、足音を忍ばせて階段をおりてゆくと、

最後の段に瑪瑙の大盃を置いて、「悲しみ」という名の歌をうたいはじめた。

世界が殷盛をきわめてこのかた無数のしあわせな都にふりかかった、

ありとあらゆる切ない痛ましいことをうたった歌だった。アクロニオンは

うたった。古の神々や獣や人々が麗しき輩を愛したことを、そして、

その想いが報われなかったことを。輝く喜ばしい数多の希望のことを、

そして、その希望がひとつとしてかなわなかったことを。ねぐらのなかの

歓喜の歌〉の楽しげなひとり笑いが不意にやんだ。獣は立ち上がって

身を震わせた。それでも獣の悲しみは消えなかった。それでも

「悲しみ」という名の歌はやまなかった。

(「女王の涙をもとめて」本文より)


こちらは初版本となっております。

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