鞭と鎖の帝国

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年9月11日はこちらです。


『ホメイニ暗殺計画』

黒沢敏彦訳 徳間書店


 街はあいかわらず人の群でごったがえしていた。革命後にモサデク博士の

名をとって改名した旧バーレビ通りやフェルドゥシー通りには、いつものように

ぎっしりと屋台が店を出し、人びとがくったくなさそうにたむろしていた。

(中略)

 田能村がそんなにぎわいを横目に見て、人々の群の中を横切ろうとしたとき、

サンドバッグを叩くような鈍い音がした。そして、とつぜん、人々の渦を

分けるように一人の男が、胸を押さえてゆっくりと田能村の方に倒れかかってきた。

胸に黒いしみをつけたその男は、神経質なコメディアンが下卑た弥次に見まわれて

醜く顔を引きつらせたかのように表情を激変させた。黒いしみが地図のように

しだいに大きく広がっていった。しみは血であった。

「血だ!人殺しだ!警察を呼べ!」

 人の群のなかで誰かが大声をあげた。田能村が近づくと、男はゆっくりと

顔をあげ、声にならない声でささやいた。

「もっと大きな殺しだ。あて馬作戦だ。」

(本文より)


こちらは初版本で現在絶版ととなっております。

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日々のおすすめ本から、

お気にいりの一冊が見つかりますように。

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ごきげんよくお過ごしください。