優雅なる野獣

ディセンバー!!

今月も気持いいことだけいっぱいになってほしいです。


今日のおすすめ本。

2015年12月1日はこちらです。


『殺人許可証No.3』

大藪春彦著 角川文庫刊


 三田村は私の革の背広の内ポケットから数枚の明治金貨を引っぱりだした。

 「何でえ、、これは?」

 と、軽い驚きの声を出し、その金貨を石黒のほうに差しだした。必然的に、

私に突きつけていた拳銃がそっぽを向く。

 私の手は首の後に組まされていたので、その拳銃を摑むには、ほんの少し

動かすだけでよかった。

 一瞬後には三田村の拳銃—コルト三十八口径ディテクチブ・スペッシャルの

輪胴式(リヴォルヴァー)は私の手に移った。

 私は転がりながら親指で撃鉄を起した。拳銃を構えている二人の用心棒に

速射弾を二発プレゼントした。

 閉めきった地下室に三十八口径の轟音は凄まじく反響した。銃身が短いので、

銃口からは吐きだされる白っぽい火箭まで見える。

 二人の用心棒は拳銃を握った腕を射ち抜かれ、絶叫をあげて転がった。無論、

衝撃でその腕は背中にまわってしまっている。握っていた拳銃は素っ飛び、壁には

血痕が飛びちり、腕を貫通した弾がコンクリートの地肌を剝き出しにしている。

 ほかの男たちは、茫然と立ちすくんでいた。白昼夢でも見ているような表情だ。

 私はゆっくり立ち上った。床に転がっている二丁のリヴォルヴァーを足で集めて

拾い上げ、輪胴弾倉から実包を抜きだして銃を捨てる。射たれた男たちは、啜り泣き

はじめていた。私は三田村に向い、

 「何とか言ったらどうだ?まだ俺を殺れるつもりかい?それとも、俺のほうから

貴様を殺ってやろうか」

 と、静かに言う。

 「助けてくれ!俺が悪かった。射たねえでくれ—」

(本文より)


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