第三の嘘

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年9月15日はこちらです。


『どちらでもいい』

アゴタ・クリストフ著 堀茂樹訳 早川書房

 さて、あるとき、その国語教師は私の顔めがけてチョークを投げつけた。

いつものように朝からいねむりしてきた私を起こそうというのだった。

私は無理やり目覚めさせられるのは大嫌いである。それにもかかわらず、

私はちっとも怒らなかった。それほどに深い愛を、私は先生方に、

またチョークに捧げていたのである。当時私はカルシウム不足を補うべく、

とてつもない分量のチョークを消費していた。そのせいで少し高熱となることも

あったが、それを口実にして学校をサボったことは一度もない。ことほど左様に

私は −何度も繰り返して恐縮ではあるが− 先生方のことが、そしてとりわけ

(卓越した才能を有する)国語、国文学の先生のことが好きだったのだ。

(「先生方」本文より)


 彼を惹きつけるのはいつも、通りの雰囲気だった。

 なんの変哲もない通りが、何ヵ月もの間、彼の注意の的となることがあった。

夏の間に見つけたある通りへ、秋になるとふたたび行ってみる。雪の季節に

また来てみたいと思う。立ち並ぶ家々の内部がどういうふうになっているかを

見抜こうとする。半開きになっている鎧戸の向こうへ、カーテンの引かれていない

窓の奥へ、視線をやる。彼は「覗き屋」になっていた。家屋の「覗き屋」である。

そこで暮らしている人びとには興味がなかった。興味の対象はもっぱら建物と

街路だった。

 そう、街路だった!

(「街路」本文より)


こちらは初版本で単行本版は現在絶版となっております。

信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

お気にいりの一冊が見つかりますように。

今日も明日も明後日も。

ごきげんよくお過ごしください。