復活!!!
今日のおすすめ本。
2017年10月3日はこちらです。
フラニーが意識を取り戻したのは、それから五分近くたってからであった。
彼女はマネージャーの部屋の寝椅子の上に寝ていて、傍にレーンが坐っていた。
心配そうに彼女を覗きこんでいる彼の顔がまた、今は目立って蒼ざめている。
「どう、具合は?」患者を見舞った県舞客のような口調で彼は訪ねた。
「いくらか気分よくなった?」
フラニーはうなずいた。頭上の電燈がまぶしくて、彼女はちょっと眼を閉じたが、
すぐまた開き「こんなときは『ここ、どこ?』って訊くんでしょうね。
ここ、どこ?」
レーンは笑った。「マネージャーの部屋だよ。アンモニア水や医者や何か、
きみの気付け薬になるものを探してみんな駆けずりまわってるとこだ。アンモニアは
きれてるらしいよ、どうも。どう、気分は?まじめな話」
「いいわよ、ぼんやりしてるけど、気分はいいの。わたし、本当に気を失ったの?
「そうともさ。まさに卒倒という奴だね」レーンはそう言って、彼女の手をとった。
「とにかく、自分の判断じゃ、どこがどうしたんだと思う?先週電話で話した時には、
どこも −別に、ねえ− 何ともなさそうだったじゃないか?朝飯を食べなかったとか
なんとか、そんなことでも?」
フラニーは肩をすくめた。そして部屋の中を見まわした。「醜態だわ」と、
彼女は言った。「誰かにここへ運び込まれたってわけね?」
(中略)
一人とり残されたフラニーは、じっと横になったまま、天井を見つめていた。
その唇が動き出すと、声のない言葉を語り始めた。そしてそのまま唇はいつまでも
動き続けていた。
(「フラニー」本文より)
こちらは旧訳文庫版で現在絶版となっております。
通信販売もさせていただきますので、
お気軽にお問い合わせください。
日々のおすすめ本から、
お気にいりの一冊が見つかりますように。
今日も明日も明後日も。
ごきげんよくお過ごしください。