こちらニッポン・・・

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年10月2日はこちらです。


『果しなき流れの果に』

小松左京著 ハルキ文庫刊


 その時、野々村は、唾をのみこもうとして、口の中がカラカラにかわいて

しまっているのに気がついた −彼は眼をむきだして、それを見つめた。

 形はどう見ても、ありきたりの砂時計だった。−四本の柱と、上下に

はまった輪が、こまかい梨子地みたいな紋様をつけた灰色の金属というだけで、

鼓型のガラス容器の中で、上の砂溜めから、下の砂溜めへ、くすんだ淡黄色の砂が、

まん中の細いくびれを通って、サラサラとこぼれつづける。

 寸時も休まず、かすかな、あるかなきかの音をたてて、砂は上から下へおちて行く。

 だが −

 それが、ふつうの砂時計ではないこと、砂時計としては、まったく役に立たない

ことは、ほんの二、三秒見つめていれば、すぐわかった。

 いくらこぼれても、上の砂溜め砂はいっこうにへらず、下の砂溜めの砂は、

少しもふえないのだ!

「これは・・・」と野々村は、引くいかすれた声でいった。

「ひっくりかえしてみたまえ」と大泉教授はいった。「トリックはないよ −

なんのトリックもないのだ」

(本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。

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お気にいりの一冊が見つかりますように。

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