ワイルド・ブルー

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年10月1日はこちらです。


『上空からの脅迫』

S.L.トンプソン著 高見浩訳 新潮文庫


 ドアをあけると、キーズではおなじみの光景が待っていた。ここは

若いヤッピーたちが目を輝かせてBMWやワインやエイズを論じるために

やってくるような、今風のバーではない。ここはまさしくマックスのような男たち

−どこをどう間違って現在の境遇に陥ってしまったのかわからないでいる、

怒れる男たち、傷ついた男たち、憔悴した男たち、当惑した男たち− が、

自分の傷口を舐めるためにやってくる酒場なのだ。彼らはもちろん、地元の男たちに

きまっている。つまり、ここキーズに住む、〝スノウバード〟ではない

すべての男たちだ。

(中略) 

 ややあって、バーテンが眼鏡をはずして近寄ってきた。

「なにがお望みだい?」

「ドス・エキス・ビール。ポテト・チップはあるかな?」

「ああ、あるよ」

 カウンターの下に手をのばして、ナプキンとポテト・チップの袋をとりだす。

そいつをカウンターに放り出してから、こんどはビールを冷蔵庫からとりだした。

壜の栓をぽんと抜き、冷蔵庫から器用にとりだしたジョッキと並べてこちらの

前に置く。マックスはマネー・クリップから五ドル紙幣を抜きとって、

カウンターに置いた。それにちらっと一瞥をくれたバーテンは、また眼鏡を

かけ直すと、電卓とのにらめっこにもどった。

 マックスはビールをジョッキに注いで、ポテト・チップを口に放りこ込んだ。

ビールはすえたような味がした。もともと高級品ではないのだ。仕方がない。

しばらくポテト・チップを口に放り込みながらビールを飲みつづけた。

(本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。

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