こないだまで暑かったはずの革ジャンを、
N-3Bにかえてみたところで、急転直下の直滑降。
存在の耐えがたい寒さ。
天は我々を見放した!
じらさないで早く暖かくしてほしいものですよ。
本当に。
今日のおすすめ本。
2015年3月25日はこちらです。
『ひそやかな村』
ダグラス・ダン著 中野康司訳 白水社刊
ぶうぶう!ぶうぶう!
(中略)
あごひげを生やした小男の大ぼら吹きが、近々出る予定の自分の詩集の話を
しているのが聞こえる。私はマイクでみんなに言ってやりたい。こいつが夏に
ヴェニスで会ったというポール・エリュアール先生は、一九五二年に死んでるんだ。
酔っぱらいの金髪女が歌を歌いながら、千鳥足でマイクの方へ向かっている。
亭主が困った様子でピアニストにチップを渡している。女権拡張論的かつ
長老会派的観点という、あまりぞっとしない観点から見た、二十世紀の女の下着に
関するお酩酊気味の熱弁に変わって、彼女は「破れし夢の大通り」という歌に
とりかかる。私はこの真理に断固喝采を送る決意なので、自分の決意に喝采を
送るみたいに、彼女が歌い出さないうちから派手な拍手を送る。彼女の仲間たちが
どうして私を睨んでいるのかは、もちろんわかってる。彼女は人気者なのだ。
だから仲間たちは、彼女があんなに酔っぱらってキーキー声を上げているのに、
私の派手な拍手を無礼ないやがらせだと怒っているのだ。
私は手洗いで、隣の男に教えてやりたくなる。言葉はぐっすり眠ってしまったか、
死んでしまったか、あるいは、チャーリーの山羊が食べてしまったのだと。そして、
遠くでは荒野も死滅しつつあるのだと。だが、私はこれを便器にむかって言い、
隣の男をどなりつける。男はお返しに、どなっている私の口にげんこつをお見舞いする。
柔らかいげんこつらしく、私の口から血は流れない。
(「クラブ・ハーモニカの一夜」本文より)
こちらは初版本で現在絶版となっております。
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貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。