ミステリガール

今日のおすすめ本。

2016年1月8日はこちらです。


『二流小説家』

デヴィッド・ゴードン著 青木千鶴訳 早川書房


「それはそうと、おれの外見はあんたが予想していたとおりだったか?」

 ぼくは軽く肩をすくめて、こう答えた。「そういうことは、まったく

考えてなかったもので」だが実際には、そのことばかりをノンストップで

考えつづけていた。それこそは、多くの作家が遅かれ早かれ直面する問題

だったから。狂気の殺人マニアはいかなる風貌をしているべきなのか。

たとえば、かのおぞましきサド侯爵のような極度の肥満体で、肉欲の監獄に

とらわれた男であるとか。あるいは、車椅子に載っているしなびた老人で

あるとか。デヴィッド・リンチが好んで用いる、悪の化身の小人であるとか。

ぼさぼさの髪を振り乱し、おかしな眼鏡をかけ、巨大なスイッチを操作している

マッド・サイエンティストであるとか。『羊たちの沈黙』のレクター博士から、

果てはドラキュラ伯爵や堕天使ルシファーまでさかのぼり、洗練された物腰と

天才的な頭脳を持つ悪魔のような人間や、悪魔のように美しい青年にしてみる

というのはどうだろう。あるいはかえって、物静かで、蠅一匹殺せそうにない

人間—どこにでもいそうなありふれた人間のほうが、読者には受けるのかもしれない。 

 だが、じつを言うなら、これまでにない容姿の殺人鬼を生みだそうという試みは、

より深刻なジレンマを覆い隠すためのかこつけではない。なぜなら、おそらくは

鏡のなかを除いて、“悪意”には顔がないからだ。

(中略)

 ぼくはいま、悪の権化ダリアン・クレイからほんの二フィートの距離にいた。

この男が極悪非道の犯罪を働いたことはもちろん知っていたが、その事実を

外見から窺い知ることはできなかった。ぼくが目の前にしているのは、ごく普通の

人間だった。ぱっと目を引くほどでもないし、特に違和感を覚えることもない。

もしきみがダリアンを目の前にしたとしても、おそらく恐怖におののくことは

ないだろう。それどころか好感すら覚えるかもしれない。

(本文より)


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