復活!!!
今日のおすすめ本。
2017年10月31日はこちらです。
『大包囲網』
スティーブン・クーンツ著 高野裕美子訳
そう、これは狩り、狂暴な狼をつかまえるための狩りなのだ。
(中略)
もし彼が負け、ハンターが勝ったとしたら − それはそれだけのことだ。
生は永遠ではない。クーガーにとって、ヘラジカにとって、
ヘンリー・シャロンにとって、生きることはすなわち挑戦なのだ。
死は大胆で機敏なものにも、愚鈍で慎重なものにも、賢者にも愚か者にも
あまねく訪れる。
一瞬の痛みを伴うとしても、シャロンは死を特別なものとは考えていなかった。
もちろん、恐怖も感じていない。命あるものにとって、死は避けることのできない
ものなのだ。それは哲学のクラスで教えられるような知的な考察ではなく、
シャロンが体験からひとつの実感として学んだことだった。あまりにも多くを
殺してきたシャロンに、死は恐怖の対象とはなりえなかった。
(中略)
合衆国大統領の暗殺者の正体を知っている者すべてが、生きているかぎり
死の影となってヘンリー・シャロンをおびやかしつづけるだろう。
彼らは重大な秘密を握っている。いつどんな状況で、その秘密を売ったり
取り引きの材料にしないともかぎらないのだ。
あらゆる危険を承知のうえで、それでもこの構想はシャロンの心を刺激した。
期待は高まるばかりで、暗殺とそれにつづく追跡劇のことを思うと血が
沸きたってくるようだ。冷たく澄んだ早朝に、彼方の尾根にすっくと立ちつくす
大ヘラジカのシルエットの認めた時のように、顔も知らない未知の人間が、
いつ彼を破滅させるともかぎらない。逃亡に成功したとしても、裏切りの可能性は
生涯つきまとう。
そこまで考えて、シャロンの決意は固まった。狩りこそは彼の人生であり、
彼の命なのだと。
とほうもなく大きな獲物とそれを仕留める瞬間のことを考えながら、
ヘンリー・シャロンは歩きつづけた。
(本文より)
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