今日のおすすめ本。
2015年12月19日はこちらです。
『ケネディ暗殺事件 その背景と真実』
仲晃著 弘文堂刊
ダラス市北西部のはずれにあるラブフィールド空港には大統領専用車が
待ちかまえていた。リンカーン・コンチネンタルのコンバーティブル、GG300、
首都ワシントンのプレート・ナンバーである。この日のパレードのために、
二千四百キロをわざわざ空輸されたものであった。
一九六三年十一月二十二日。
この日もしも前夜らいの雨足がにぶり、けむるような霧雨に変わって
いなかったなら、乗用車には屋根がおろされ、従って暗殺者に精密な目標を
与えなかったであろう。この日もしも右翼の牙城ダラスの市民が大統領に熱狂的な
歓迎を示さず、市内各所に不穏なプラカードや人の動きがあったなら、乗用車の
側面の分厚い防弾ガラスが引き上げられて凶弾の何発かをはね返したであろう。
この日ダラスは、小雨のち晴。正午の気温二四・四度。
（中略）
午前十一時五十分、最後の一人との握手を終えたケネディ大統領は、
先頭に立って気軽に専用車に乗りこんだ。後部座席の右側が彼の席で、
左はジャクリーン夫人。前部の二つは、右がコナリー・テキサス州知事。
左がアイダネル（愛称ネリー）同夫人というふりあてであった。三十六人の
秘密護衛隊（シークレット・サービス）員がいっせいに散った。そのうちの
一人は専用車の最前部に乗った。乗用車の真うしろには、十フィート
（約三メートル）の間隔をおいて「クイーン・メリー」がピッタリと続く。
この大げさなニックネームがどこから生まれたのか知るよしもないが、
この車は秘密護衛隊員と、武器をすしづめにした防弾自動車である。
三台目にはジョンソン副大統領とレディバード同夫人が護衛官一人と
ともに乗っていた。
（中略）
見なれた光景が展開している。市民たちは、
「ハイ・ジャッキー（ジャクリーン夫人の愛称）」
「ハロー・ジャック（大統領の愛称）」
などと口々にさけんで手をふる。車道へ近よろうとして警官に制止される
ものもある。
（中略）
パレードはほとんど終わろうとしていた。先頭を行く大統領の車は立体交差点に
さしかかった。時計の針は午前零時半（中部標準時）をさしていた。
（本文より）
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