虎よ、虎よ! 

今日のおすすめ本。

2016年2月6日はこちらです。


『分解された男』

ルフレッド・バスター著 沼沢洽治訳 創元推理文庫


「おたがい、あまり信用が置けんな?」

「なにを言うかい!」ライクはきっぱりと言いはなつ。「小娘のおままごとを

やってるんじゃないからな、おれとあんたは。おたがい食うか食われるかの

一本勝負よ。やれ規則だの、フェア・プレーだのぶつぶつ言うのは、腰ぬけ、

弱虫、負けっぷりの悪い連中にきまってる」

「名誉とか道義なんてものはないのか?」

「名誉はあるさ。だがあくまでおれたち流の名誉・・・びくびく屋の吹けば

飛ぶような連中が、ほかのびくびく屋の吹けば飛ぶような連中のために作った、

絵空事の規則なんてものたぁわけが違う。人間だれしも自分自身の名誉と道義を

持ってる。めいめいそれを守ってるかぎり、よその人間がうしろ指さす筋合いは

あるまい?なるほどそいつの道義が気に入らんかもしれぬ。だからといって、

そいつを道義にもとる男だときめつける権利はだれにもあるまい」

 パウエルは、悲しい表情で首を横に振った。「きみという人間は、ふたりに

分れてるんだな。ひとりは立派な男、もひとりは悪党。きみが骨の髄までの

人殺しなら、そう悪くはない。ところが君の半分は卑劣感、半分は聖人君子

—いっそう始末が悪いんだよ」

(中略)

 一瞬ライクは、降伏寸前に追い込まれ、よろめいていた。だがすぐ自分を

立て直すと、ふたたび攻勢に転ずる。「そうして、わが生涯最高の勝負をふいに

しちまうってのか?お断りだ。金輪際ノーだぜ。とことんまで殴り合って、

決着をつけようや、なあ?」

 パウエルは怒気を現わし、肩をすくめた。ふたりは立ち上がり、つい本能的に、

別れのあいさつとして、両手を固く取り合っていたのである。

「おれもあんたという、絶好の相棒を失ったわけだなあ」ライクが言った。

「きみはきみ自身という、偉大な人物を失ったんだよ、ベン」

「では、敵同士か?」

「そう、敵同士だ」

 これが《分解》への第一歩だった。

(本文より)


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