今日のおすすめ本。
2015年10月23日はこちらです。
『能面殺人事件』
高木彬光著 角川文庫刊
千鶴井家の立っている岬へかかったとき、僕は世にも悲しいピアノの音を
耳にした。曲はたしかに、リストのハンガリア狂詩曲第六番、平素でも聞く
者の心に、何か物狂わしい感じを起こさずにはおかないこの曲の旋律の中に、
僕はこの世のものとは思えない悽愴な鬼気を感ぜずにはおられなかった。
かたわらの柳君が、静かにうなずいて見せた。僕の思ったとおり、狂女の
弾くピアノの音なのだ。かつて天才と謳われた千鶴井緋沙子が、崩れゆく
記憶の糸をわずかにたどって、この狂詩曲を弾いているのだ。
そのときだった。
あの鬼女が二階の窓から顔を突き出して、月光の中で笑いはじめたのは・・・。
これは断じて錯覚ではない。幻想ではない。鋭い牙と日本の角は、冷たい
月光を浴びて、遠くからもはっきりと認められたのだ。忿怒を示す青白い顔に、
金泥のような両眼だけが輝き、耳まで裂けた唇は、たったいま犠牲の鮮血を
すすったのかと思われるばかり。
ピアノの音はなおもつづいている。いっそう早さを増し、さらに凄気を加えて、
鬼女の背後から圧するように、こちらへと響きわたる。だがそれはもはや、
リズムに乗った曲ではない。調子を失い、音階を逸して・・・それは鬼女の
ものすごい笑い声が風に乗って流れて来るのかとさえ思われるのだった。
そしてその音は、まもなくぴたりとやみ、それとともに凄惨な女の狂笑が
甲高く響いてきた。
鬼女の顔は、まだ窓から消えてはいない—。
(本文より)
こちらは初版本で現在絶版となっております。
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