今日のおすすめ本。
2015年10月23日はこちらです。
『存在の耐えられない軽さ』
ただ偶然だけがメッセージとしてあらわれることができるのである。必然的に
おこることや、期待されること、毎日繰り返されることは何も語らない。
ただ偶然だけがわれわれに話しかける。それをジプシーの女たちがカップの底に
残ったコーヒーのかすが作る模様を読むように、読みとろうと努めるのである。
トマーシュは彼女のレストランに絶対的な偶然としてテレザの前にあらわれた。
彼は本を開いてテーブルに座っていた。目をあげてテレザを見て、ニッコリし、
「コニャック一杯」と、いった。
そのときラジオから音楽がきこえた。テレザはコニャックを取りにカウンターの
向こうへ行き、もっとよくきこえるようにラジオのスイッチを回した。彼女には
それがベートーベンだということが分かった。その曲はプラハからクヮルテットが
彼女らの町に来たとき以来知っていた。(ご存知の通り、何か“より高度なもの”に
憧れていた)テレザはコンサートに出かけた。ホールはまるっきり空っぽだった。
テレザと共にそこにいたのは薬剤師とその奥さんだけであった。すなわち、
舞台上には演奏家がクヮルテットで、ホールには聴衆がトリオでいただけだが、
音楽家たちはとても好意的で、コンサートを中止せずに、三人だけの聴衆のために
ベートーベンの最後の三つの四重奏を一晩かけて演奏した。
そのあと薬剤師は音楽家を夕食に招待し、見知らぬもう一人の娘さんにも、
ご一緒にどうぞと招待した。そのときからベートーベンは彼女が憧れていた世界、
向こう側の世界のイメージとなった。カウンターからトマーシュのための
コニャックを運んだとき、その偶然の中にあるものを読みとろうと努めた。
テレザが気に入っている見ず知らずの男性にコニャックを持っていくまさに
そのときに、ベートーベンがきこえるのはどうしてであろうか?
(本文より)
ジュリエット・ビノシュと ダニエル・デイ・ルイスが主演、
フィリップ・カウフマン監督の手によって映画化されました。
こちらは通信販売もさせていただきますので、
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The Birthday NEW ALBUM『BLOOD AND LOVE CIRCUS』。
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さらばチドリアシ狼よ!!