今日のおすすめ本。
2015年10月16日はこちらです。
この弱々しげな女の子の存在に気がついたのは、紺と褐のつばくろが
渡ってくる頃で、よく雨が降った。
(中略)
港口正面の掘割の岸にある彼女の家は、荷揚場の往来から、それに平行した
町中の本町通りまで続いているくらい広大で、従って上部に釘の並んだ黒板塀に
添うてぐるりを一巡してみても、いったいどの辺に彼女の居間があるのか、
見当などは付けられないのだった。「かわたれ時」という言葉を少年雑誌の
ページで知ったのは、この頃の話である。黄色い薄暮の高い窓辺から往来を
眺めている少女の物語の中に、私は「かわたれ時」という言葉を発見した。
夕暮れには行き交う人々の顔がぼやけて、「彼(か)は誰(たれ)であるのか?」と
疑われるところからそう云われるのだ、家の書生が教えてくれたが、当初、
かわたれという奇異な語音の中には、河童の連想があった。それにこの刻限は、
すでに知っていた「逢魔ヶ時」と一致するのであったから、私は、夕方に
歩いていると覚えもつかぬ区域に自分が紛れ込んでしまい、どこが入り口なのか
判らぬような大きな屋敷の高い窓辺に、赤沢さんめく幽閉少女の白い顔を
認めるような気がしたものである。
(「彼等」本文より)
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