ある微笑

今日のおすすめ本。

2015年10月13日はこちらです。


『愛は束縛』

フランソワーズ・サガン著 河野万里子訳 新潮文庫


「その背広、素晴らしくよく似合うわ」そう言いながらローランスは、

頭のてっぺんからつま先まで、ぼくの体に目を走らせた。「やっぱり私たち、

あのグリーン・グレイのじゃなくて、このブルー・グレイの方にして

よかったわね。そう思わない?あなたの瞳の色には、こっちの方が断然

映えるもの」

 ぼくはおごそかにうなずいた。ぼくが服をあつらえる時に、ローランスは

必ず《私たち》という言い方をする。それがぼくは大好きだ。《私たち》が

この生地を選んだの、《私たち》がこの仕立てに決めたのよ、《私たち》

ぴったりのシャツを買ったわね、ほら《私たち》どのシャツにも似合う

カフスボタンを(以前に)買ったでしょう、《私たち》どの服でもはける

イタリア製のモカシンをもう持っているわ、そのストライプが映えるように

《私たち》ブルーの地のネクタイを買いましょうよ。そしてもちろん、

これらすべての後でもし《私たち》が不満だったとしても、もうどうしようも

ないのである!・・・《私たち》と言いながら、実はどれもローレンス一人の

ことでしかないからだ。いやぼく自身を指す《私たち》も一つだけある。

一番最後の、不満を感じながらあきらめ切っている人物である。七年の間に

ぼくは、男が自分自身の趣味なり意思なりですることのいくつかを、自分の

手の内に取り返しつつあった。たばこや髪型やスポーツ・クラブといったものは、

自分で選べるようになってきた。男の目を引くさまざまながらくた商品などもだ。

だが着るものに関してはどうしてもだめだった。ローランスは、情熱的な若い男と

同時に、大きな着せ替え人形を手に入れたつもりなのだろうか。衣服については

まるで自分の権利であり趣味だと言わんばかりに、決して譲ろうとしない。

ぼくは何度も抵抗しようとしたあげくにそう知ったのである。

(本文より)


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