今日のおすすめ本。
2015年10月4日はこちらです。
『水の家族』
私は終ったのではなく、始まったのだ。
そうとしか思えない。そうとしか思えない光景が今、私の真下に伸びやかに
広がって輝いている。昇り竜を想わせる忘れじ川、その上流で休まずに火口から
水蒸気を立ち昇らせている餓鬼岳、下流で大量の真水を呑みつづけている天の灘、
川向うを隙間なく埋めている桃園、城址公園を中心にして四方八方へ延びている
大小さまざまな道、緑色の麦畑、水色の田、金色の菜の花畑、住宅街と繁華街・・・
草葉町のすべてが、私の三千メートル下に横たわっている。
川辺に棲息する水鳥たちは、狙う餌の種類によって形が異なる嘴を巧みに
使いこなし、あるいは、気に入りの餌場をめざして力強く羽ばたき、あるいはまた、
縄張りを巡っての小競り合いに備えてひそかに闘志を燃やしている。
その真名鶴だが、五月になってもまだ居残っているからといって、決して造り物
などではなく、剥製の類いでもない。豊かな樹林に囲まれた沼に片肢を突っこんだまま
身じろぎもしない一羽の鶴、そいつは大陸を渡ることを忘れてからすでに久しく、
私が家を出た五年前にもそこにいたし、八重子が私の妹でしかなかったもっと以前からも、
そいつは四季を通して草葉町の空ばかり飛んでいた。
(本文より)
作家による再構成をした新生版。
こちらは初版本となっております。
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