死ぬことと見つけたり

午前中少し晴れたと思ったら、やっぱり雨が降ってきましたね。

移り気なのは秋の空ばかりではないようです。

気温も安定しないせいか、風邪をひかれている方も多いとか。

くれぐれもご自愛ください。


今日のおすすめ本。

2015年4月15日はこちらです。


葉隠入門』

三島由紀夫著 新潮文庫


 現代は、生き延びることにすべての前提がかかっている時代である。平均寿命は

史上かつてないほどに延び、われわれの前には単調な人生のプランが描かれている。

青年がいわゆるマイホーム主義によって、自分の小さな巣を見つけることに

努力しているうちはまだしも、いったん巣が見つかると、その先には何もない。

あるのはそろばんではじかれた退職金の金額と、労働ができなくなったときの、

静かな退職後の、老後の生活だけである。このようなイメージは福祉国家

背後には、つねに横たわって人々の心を脅かしている。

(中略)

ただ、われわれは死を考えるのがいやなのである。死から何か有効な成分を

引き出して、それを自分に役立てようとすることがいやなのである。われわれは、

明るい目標、前向きの目標、生の目標に対して、いつも目を向けていようとする。

そして、死がわれわれの生活をじょじょにむしばんでいく力に対しては、

なるたけふれないでいたいと思っている。

(中略)

 しかし、死だけは、「葉隠」の時代も現代も少しも変わりなく存在し、

われわれを規制しているのである。その観点に立ってみれば、「葉隠」の

言っている死は、何も特別なものではない。毎日死を心に当てることは、

毎日生を心に当てることと、いわば同じだということを「葉隠」は主張している。

われわれは今日死ぬと思って仕事をするときに、その仕事が急にいきいきとした

光を放ち出すのを認めざるをえない。

(本文より)


これはまさしく『ファイトクラブ』。

もしやタイラー氏も『葉隠』を読んでいたのでしょうか。




こちらは旧装版でカバーのデザインが異なっております。

信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせくださいませ。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。