重力への挑戦

今日のおすすめ本。

2016年9月28日はこちらです。


『巨人頭脳』

ハインリヒ・ハウザー著 松谷健二訳 創元推理文庫


 「リーさん、話せば長くなりますが」とスクリブンは言葉をつづけた。

「事のおこりは、一九四六年、わたしが合衆国大統領にあてた手紙なのですよ。

その手紙でわたしは、核戦争に起こるべき重大な危機のことを暗示しました。

軍部は予想もしていない危機のことをね。つまり、人間の頭脳の頼りなさ、

精神的肉体的ショックに対するその敏感さを指摘したのです。科学と技術は、

ここ何世紀の間に、人類の頭脳エリートの共同の努力で発達したが、個々の頭脳は、

たとえ水準以上でも、科学と技術の全体が到達した目もくらむばかりの高みには、

とうていたどりつけないと説明しましてね。現代の大衆の集団頭脳は、

高度の文明水準に背を向ける、時としては敵意をもつ、なぜかというと、

その水準が集団の精神力をはるかに上回るからである。

(中略)

 これが手紙の前置でした—次にすぐわたしの計画を出したのです。それが、

以後わたしのライフワークになったわけですが。つまり、こういう情況下での

国土防衛にもっとも重要なのは、機械の頭脳を作り出すことであると進言したのです。

人間の頭脳より大きく優秀で、どんなショックもうけない中枢神経組織ですな、

これはアメリカという要塞の最中央部に作らなくてはならない、統合参謀本部

思考を強化しコントロールするために、と説明しました。

(中略)

 わたしは大統領にはっきりと、物理学、電気化学、生化学、神経学などの

大々的動員が必要だといったのです。世界じゅうの研究や個々の頭脳に

ばらまかれた、何百万という研究成果を集めなければならない。時間もいる。

金もいる。たいへんな金が。だがついに、原子爆弾を作りあげた共同の努力が、

この問題の解決は可能であることを証明したのでした・・・」

(中略)

「・・・それから、われわれは『頭脳』を作り上げたのです!」

(本文より)


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