優しい関係

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年12月12日はこちらです。


『心の青あざ』

サガン著 朝吹登水子訳 新潮文庫


「もう一度そのレコードをかけてよ、ね?」とエレオノールが頼んだ。

 セバスチャンは腕をのばし、足もとのレコード・プレーヤーの

ピック・アップを動かした。彼はどのレコードをかけるかたずねなかった。

エレオノールは、古典音楽心酔の期間の後でシャルネ・トルネのレコードに

夢中で、そればかり聞いていた。

  《死んだ森の枝の上に

   夏の最後の鳥が一羽

   揺れている・・・》

 彼らは南フランスのキャップ・ダイユのジュデルマン氏の別荘のテラスの

揺り椅子の上に寝そべっていた。最初は少しつらかったが、それが過ぎると、

セバスチャンは、ノラ・ジュデルマンに一種の愛情を感じ始めていた。

(中略)

精神的にこの夫婦を魅了したエレオノールは、再び好きな読書にふけったが、

今回は浜辺であった。日に焼け、愛想よく、平静なエレオノールは、

いくつかの小説のページの間を夏が夢のように過ぎていくのを見ていた。

別荘主の社交界の友達の幾人かが彼女に言い寄ったが無駄だった。

その埋め合わせに、セバスチャンは彼女のために別荘の庭師、

つまり美丈夫との夜の逢引を手助けした。けれども彼はそのことを

彼女に喋らなかった。それほど、彼らの《ロマンス》は彼らにとって、

そして彼らの間では、冗談の話題であり、気まぐれな内容の情事は

秘密でなければならなかった。それが互いの好色に対する絶対的な敬意

(恋愛問題に対する変らぬ皮肉の感情の混り合って)であり、

それゆえ、つねにそれが二人の共存を可能にしていたのだということを

彼らは知っていた。

(本文より)


こちらは現在絶版となっております。

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