幸福な無名時代

今日のおすすめ本。

2016年2月26日はこちらです。


予告された殺人の記録

G・ガルシア・マルケス著 野谷文昭訳 新潮文庫


 アンヘラ・ビカリオは四人娘の中で一番の美人だった。彼女は物語に出てくる

偉大な女王たちみたいに、首にへその緒を巻きつけて生れてきたのだと、わたしの

母はそう言っていた。だが、彼女はどこかたよりなげで、溌剌としたところに

欠けていた。それは、彼女の行く末が不確かであることを予告するようだった。

毎年、降誕祭の休暇の折に、わたしは、窓辺にいる彼女を見かけた。が、その都度、

彼女は以前にも増して生気がないように見えた。彼女は昼下りになると、近所の

娘たちと一緒に、窓辺に腰掛け、端切れで造花を作ったり、気軽にワルツを歌ったり

していた。「お前のいとこの馬鹿娘ときたら、鰊の薫製みたいにがりがりだな」と

サンティアゴ・ナサールはよくわたしに言ったものである。彼女の姉が亡くなる少し

前のこと、わたしは思いがけず、通りで彼女に出会った。外で彼女に会ったのは、

それが初めてだった。いかにも女らしい服を着て、髪をカールさせていたため、

同じ人物とは思えない華やかさがあった。だがそれも、はかない幻にすぎなかった。

年とともに、彼女はますます精彩を失っていった。あまりの生気のなさに、

パヤルド・サン・ロマンが彼女との結婚を望んでいることがおおっぴらになったとき、

多くの人々は、それがよそ者の気紛れにすぎないと思ったほどである。

(中略)

 ところが、アンヘラ・ビカリオの方は、彼との結婚を望んでいなかった。

「あたしには過ぎた人に見えたものだから」と彼女はわたしに言った。しかも

パヤルド・サン・ロマンは彼女にそれ以上迫ろうとはしなかった。彼はその魅力で、

彼女の家族の心を捉えてしまったのである。アンヘラ・ビカリオは、家の広間に

集まった両親と、夫を伴った姉たちから、よく知らない男と結婚するように

強いられた晩の恐ろしさを、決して忘れなかった。

(中略)

アンヘラ・ビカリオに辛うじてできたのは、愛のない結婚のむなしさをほのめかす

ことぐらいだった。けれど、それも母の一言であっさり片付けられてしまった。

「愛だって習うものだよ」

(本文より)


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日々のおすすめ本から、

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