推理小説作法

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年12月9日はこちらです。


『ミステリイ・カクテル』

渡辺剣次著 講談社文庫刊


  実際、江戸川乱歩ほど「一人二役」の魅力にとりつかれ、

これを執拗にくり返しくり返し、その作品にとりあげて物語る

作家はいないであろう。

 乱歩が書いた本格的な推理小説 − 戦前では「幽霊」「湖畔亭事件」

「パノラマ島奇譚」「陰獣」「何者」「鬼」「石榴」など。

戦後では「化人幻戯」「月と手袋」などは、いずれもこのトリックを

中心に据えている。

 乱歩にとって、「一人二役」は、その生涯を通じての

中心的テーマだったと称していいすぎではない。しかし、ここでいう

一人二役」トリックは、欧米の作家によって客観的に描き出されるような

「意外な犯人」のためのトリックではない。

 乱歩が、魅せられたのは、一人二役を演ずる側 − つまり変装や、

変貌によって、一個の人間が、二人分の人格や環境をもつことに

あったようだ。

(中略)

 このように乱歩の文学では、たえず変装や変貌の魅力が語られている。

そこには、それぞれの主人公が自分の現在の環境とは異なった、

まったく新しい環境のなかで行動したいという夢がひめられている。

これは変身願望の文学と、言っていいのではないか − 。

 そして読者が、これに共感を覚えるのは、人生はやり直しができない、

人は、その環境を一変させることができないという哀れな宿命を

自覚しているからであろう。

(「変身願望」本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。

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