ドルジェル伯の舞踏会

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年10月15日はこちらです。


肉体の悪魔

ラディゲ著 新庄嘉章訳 新潮文庫


 勇気と卑怯は単に言葉としてしか存在しないものである。それらは僕たちの

行為に符牒をつける。だが、どうしてその一つに軽蔑的な意味を与えるのだ。

誰でも、自分を実際の自分以上に高めることはできない。勇敢であることの方が

より賞賛に値するということはない。僕たちのすべての行動は、僕たちに相対した

ものである。僕にしても、苦痛を前にして悲鳴などあげはしないが、

それで僕が他人より勇気があると言えるのだろうか?むしろ感じが鈍いのだ。

歯医者にかかっても悲鳴をあげることができないのは、僕にとっては、

愛することができないのと同じく、一つの欠点だ。だが、誰にしろ、

苦痛をかんじないといっても限度がある。ドニーズのそれも限度に達した。

僕があの羊飼いの少年を無邪気に抱いているところを見てからだ。これまでは、

僕が接吻してやってもちっとも喜びを感じなかった。彼女にあっては、

嫉妬が恋愛に先立ったのだ。僕が他人を抱擁しているのを見て、今やっと彼女は

僕の接吻にいくらかの値打ちを認めたのだ。

(中略)

 だが、僕が彼女を怪物と信じていたのには、いくらかの理由があった。

僕はこの娘をどうしても辱めることができなかったが、彼女の方は

僕を辱めては大いに喜んでいたのだ。僕が赤面するのを見て悦ぶとは、

彼女も僕に似ているのだろうか?

(「ドニーズ」本文より)


こちらは旧装版で現在絶版となっております。

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お気にいりの一冊が見つかりますように。

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