復活!!!
今日のおすすめ本。
2017年10月14日はこちらです。
『書物漫遊記』
見世物には中身がない。だから見世物に本当とか中身を期待して、
小屋に入ってからがっかりしたり、ダマされたと思ったりするのは
野暮の骨頂というものなのだ。ダマされているのを承知で娯しむのが
まっとうな見方なのである。
ひと昔も前までは、人びとはちゃんとこの物見のコツを心得いた
ようである。見世物はペテンを演じて見料を取り、大道芸は嘘八百の
口上を並べてガセネタを売った。ここでは口上そのものが芸なのだから、
巧みな口上に釣られてガセを掴ませられたからといって、むやみに
逆上してはいけない。口上の芸を娯しんだ分に見料を払い、ガセの
オマケまでもらったのだから得をした、と考えた方が利口である。
そこで変に力みかえって金を返せなどと喚き散らせば、野暮の見本になる。
いい例が娼家に上がって女に素気なくあしらわれたからといって、
湯気を立てながらオブ代を返せと迫る客のようなものであろう。
この場合には、明らかに娼婦に実のある情を期待する方が
間違っている。
(中略)
ダマされている快感、カモにされていることの得も言われぬうれしさ、
世のありとあらゆる快楽のなかでこれに過ぎたるがものはない。
この辺の消息が分からない人は、いつまでたっても現実の狭苦しい
実利世界から逃れられなくて、万年雪隠づめの、便秘状態でいるより
ほかはない。一言にして尽すなら、この手合いには信仰心が
足りないのである。
(「見世物今昔考」本文より)
こちらは旧装版で現在絶版となっております。
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