追想五断章

今日のおすすめ本。

2014年10月15日はこちらです。


世界堂書店』

米澤穂信編 文春文庫刊


 最初にあなたを見たとき、私は書店に潜んでいた。コーヒーショップの

マフィンしか食べ物がないところで暮らすのは。もう嫌になっていた。ある意味、

居心地はよかった・・・・・読書、そして音楽。物は一度も盗らなかった。

だって、気に入った物をどこに持っていける?昔、デパートに住んでいた頃すら、

物は盗らなかった。(中略)

 でもその後、あの書店であなたを見かけたのだ。私とぴったり同じ背丈。

まったく同じ風采。それにまったく目立たないのも一緒。ほとんど人目に

つかない私と同じくらい、人目につかない人だということがわかった。

 あなたの家まであとをつけた—町を出てすぐの素敵な家だ。私があなたの

服を着れば、あなたの家に出入りできて、みんなからあなただと思うだろう。

でも、どうやって中に入ればよいだろう?夜中に窓から忍び込まなくては、

と思った。

(「私はあなたと暮しているけれど、あなたはそれを知らない」本文より)


収録されている小説は全部で十五編。

併せて編者の米澤氏自身による全作解説もついております。


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日々の“おすすめ本”から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。