今日のおすすめ本。
2014年10月12日はこちらです。
『伊勢詣と江戸の旅 道中日記に見る旅の値段』
金森敦子著 文春新書刊
お蔭参りは六〇年周期で流行するといわれた。実際に流行したのはきっちり
六〇年というわけにはいかなかったが、その時期にめぐりあえばごく簡単に
長期の旅ができたのである。
中には道中で施行されたものを貯めて、無一文で行ったのに銭を持って帰った
というメデタイ話もある。(中略)
しかし、お蔭参りはあくまで突発的なものであり、それがいつやってくるのか
おおよその予想はつくものの、はっきりはわからなかった。
それまで我慢できない者、あるいは女たちや商家の使用人などは、旅をする
機会がなかなか与えられなかったので、親や主人の許しを得ずにこっそりと
伊勢へと旅立った。これは抜参りといって、明和八年以降に特に多くなった。
こうした者の中には、まだ乳臭さのとれない、幼児といっていいほどの少年の
姿さえみられたという。(中略)
抜参りは無一文でも何とかなった。門口に立って柄杓を差し出せば、小銭や
穀類を喜捨してくれる者が大勢いた。お蔭参りへの施行の習慣がここでも
発揮されたのであろう。
(本文より)
こちらは初版本となっております。
通信販売もさせていただきますので、
お気軽にお問い合わせくださいませ。
くれぐれも道中心得をお忘れなく。
日々の“おすすめ本”から、
貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。