今日のおすすめ本。
2014年3月26日はこちらです。
『美しい部屋は空っぽ』
エドマンド・ホワイト著 柿沼瑛子訳 早川書房刊
イヴァンをとおして、ぼくはポールを紹介された。彼こそはぼくが
生まれて初めて出会った天才だった。その姿はあちこちから藁ならぬ
褪せた銅色の髪の毛がふぞろいに飛び出た、のっぽのかかしそっくり
だった。黒縁の丸いアナーキスト眼鏡をかけていたが、その奥に光る
目はむしろ政綱なきニヒリストを思わせた。彼は美術アカデミーで
もっとも才能のある画家だった。誰もかれも—教師でさえその非凡な
才能をおそるおそる認めていた。凡人とは違う何かが彼のまわりを
空気のように包んでいたが、本人はいっこうに気にしていなかった。
(本文より)
こちらは初版本で現在絶版となっております。
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