マリーについての本当の話

今日のおすすめ本。

2015年11月27日はこちらです。 


『ためらい』

ジャン=フィリップ・トゥーサン著 野崎歓訳 集英社文庫


 ぼくがサスエロの村に着いたのは十月末のことだった。もう秋で、

観光シーズンも終わりに近づいていた。スーツケースやかばん類と一緒に、

ある朝タクシーで村の広場に到着した。運転手は、タクシーの屋根の

キャリアから息子の折り畳み式ベビーカーを下ろすのに手を貸してくれた。

それは古いディーゼル型のルノー504で、運転手がエンジンを切らずに

いるせいで広場にはゆっくりとした唸りが響き続けた。それから彼は、

そのあたりに一軒しかないホテルの場所を教えてくれたのだが、ぼくはそこに

前にも泊まったことがあって知っていた。ベンチのそばにスーツケースや

かばんを残して、息子と一緒にホテルめざして進み始めたのだけれど、

ベビーカーに収まった息子は何の心配もない様子で、ぬいぐるみのアザラシを

じっくりと眺め、両手にはさんでいじりまわし、ためつすがめつ念入りに

調べながら、ときどきあっぱれなほど自然に、堂々たるおくびを漏らした。

(中略)

 サンタグラロの港は、冬はそれほど訪れる人もないところだが、それでも

五十隻ほどのレジャー船がいつでも停泊していて、船舶用の物品を扱う専門店が

あり、そのほかにも郵便局と銀行、スーパー、そしてレストラン数軒があった。

昼までいて昼食を食べていくつもりで、村の広場でおろしてもらったとき、

運転手に、昼食後に迎えに来てもらうよう頼んだ。相変わらず険悪な空模様を

眺めながら、ぼくは息子のベビーカーを押してスーパーに向った。ベビーカーの

中で体をしゃんとさせて座り、神経を集中させて前を見つめている息子の姿は、

まるで船団の先頭を守る、小さな不動の船首像という感じだが、ときどき舗道に

ぬいぐるみのアザラシをわざと落としては、ぼくがそれを拾ってやるのを、

断固とした無関心にそこはかとなく好奇心の交じったまなざしで見つめるのだった。

(本文より)


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