今日のおすすめ本。
2016年2月13日はこちらです。
『飛ぶ教室』
エーリッヒ・ケストナー著 山口四郎訳 講談社文庫刊
ゼバスチアンは、山林官通り十七番地、四階の、エーガーランドの家のベルを
鳴らしました。女の人がドアをあけ、ふきげんそうに、彼の顔を見ました。
「ぼくは、おたくのぼっちゃんとおなじクラスの者ですが、ぼっちゃんに会えますか」
ゼバスチアンはいいました。
「きょうはまた、入れかわり立ちかわりだれかくるのね」
女の人はぼやきました。
「あなたたち、いったいどうしたの。そりをしまうからといって、地下室の鍵をとりに
くる人があるかと思うと、洗濯物をほす網がぜひほしいといってくる人がある。ほかの
人たちはまたほかの人たちで、うちの中にはいってきて、じゅうたんをどろだらけに
してしまうし」
ゼバスチアンは、靴ぬぐいの上で、靴をきれいにぬぐってからききました。
「エーガーランド君は、いま一人ですか、おばさん」
夫人はうるさそうにうなずくと、彼を家の中に入れてくれました。
「そこがあの子の部屋ですよ」
夫人はろうかの奥のドアを指さしました。
「ああ、わすれないうちに—地下室の鍵は、もうもどりましたか」
ゼバスチアンはききました。
「あなたも、そりをしまうつもり？」
夫人はふきげんにいいました。
ゼバスチアンは首を横にふりました。
「どうしてもってわけじゃないんです、エーガーランドのおばさん」
彼はいうと、ノックもせずに、敵のリーダーの部屋にはいっていきました。
（本文より）
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