昭和遺産探訪

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年10月18日はこちらです。


『場末の酒場、ひとり飲み』

藤木TDC著 ちくま新書


  店の名は「しま」という。店主のルーツが沖縄にあることが由来というが、

驚くべきはこの店がすべて店主の自作によるものということだ。

「自分は大工仕事もできるので・・・」

 とポソリとつぶやく店主の寡黙さが実にいい味だ。

 合板の壁には古い柱時計がコチコチと振り子を揺らし、横長の模造紙に

マジックで書かれた品書きがある。「定食」「中華」「そば・うどん」各種が

荒々しい男文字で殴り書きされ、その下に「酒」「肴」のメニューがある。

「肴」でそそられるのは、沖縄系の店らしい「ゴーヤチャンプル」

「トーフチャンプル」「ポークエッグ」。

 「ポークエッグ」は豚肉の缶詰( 『スパム』などのランチョンミート)と

スクランブルエッグを和えたものだが、ここの店ではさらに目玉焼きが加えられ、

そこにマヨネーズとソースをかけて食べるのだ。そのボリューム、濃厚さと来たら!

ビール中瓶をグイッと飲み干して、さらに泡盛のロックを引っかけてもまだ

食べきれないほどだ。

 定食を注文した隣の席の背広の中年男は傍らにビール瓶を置いて山盛りの丼飯を

かき込んでいる。基本的にこの店は料理のボリュームを強調する傾向が感じられ、

まるで地方の大衆食堂で食事兼晩酌をしているような気分になる。

 そのボリュームゆえ、あるいは周囲にファミリーレストラン風の店が

散在しているゆえに、女性や子供連れはやってこない。そして全体に安普請や

経年変化を感じさせる店内外の造作、客の少なさ、一人の客が多いこと、

店主の寡黙さなど、「場末」的な要素はすべて揃えている。

(「場末酒場を探して」本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。

信販売もさせていただきますので、

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日々のおすすめ本から、

お気にいりの一冊が見つかりますように。

今日も明日も明後日も。

ごきげんよくお過ごしください。