なめらかで熱くて甘苦しくて

突発的に始まり、唐突に終わります。


文学賞受賞女流作家特集。

本日第六弾。

正確にいうと第五弾の続きでございます。


今日のおすすめ本。

2015年1月21日はこちらです。


『ゆっくりさよならをとなえる』

川上弘美著 新潮社



 終点まで私鉄に乗って、それから地下鉄に乗りかえて、古本屋の町へ行った。

今日は本を見てまわろう。

 本を「見てまわる」というのは、本を「買う」こととは、ちょっとちがう。

本を買うのは、本を読むため。本を見てまわるのは、本の表紙の紙をさわってみたり、

題名を眺めてたのしんだり、こんな本が世の中にあったのかと驚いたり、するため。

(中略)

 だから、古本屋。ずっと前から少し前までの、長い期間で出版された本が、

平均化されることなく、偶然も必然も混じって、ちりぢりばらばらに

置かれている。そのちりぢりばらばらを眺めるために、地下鉄に乗って、

でかけていった。

(中略)

 今日はできるだけ本を買わないこと。そう決心して家を出た。でも、

むりだった。財布がさらに軽くなろうと、家にさらに本が溢れかえろうと、

そんなことはどうでもよくなってくる。古本屋の、湿ってひんやりとした

空気の中に立つと、手にとって眺めた本を、いったんは棚に戻しても、

けっきょくは買わずにいられなくなる。

 文庫本に図鑑。小説に評論。背中にしょったリュックサックの中で、

紙袋にしまわれて、「ワタクシたちを買ってくださいましたね」という

気分をリュックの生地ごしに放射してくる、古い本たち。

(「古本屋街へ」本文より)


「古本屋の町」とは、やはり神保町でしょうか。

いきたいなあ、神保町。

食べたいなあ、ひらめフライしょうが焼きライス。



「ワタクシたちを買ってくださいましたね」という古本に、

みなさんもFabulousの本棚で出逢っていただければと思います。


こちらは単行本版で現在絶版となっております。

信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせくださいませ。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。