天頂より少し下って

いったいいつまで続くのでしょうか。

自分でもわかりません。


文学賞受賞女流作家特集。

本日第五弾でございます。

今日のおすすめ本。

2015年1月20日はこちらです。


『ゆっくりさよならをとなえる』

川上弘美著 新潮社


 好きな棚がある。駅前の本屋さんの、入った左の裏側の棚。

実家のそばの本屋さんの奥の、十二段ある棚。商店街の本屋さんの、

マンガの横の狭い棚。

 それらの棚を訊ねれば、一冊や二冊、手に取りたい本が必ずある。

実際には買わなくとも、その棚にその本があることを知っているだけで、

安心するような本。山の上から見た灯台の灯のようなものだ。自分が今

航海しているのでなないけれど、そこにあって一時も休まずにくるくる

廻っている灯があるだけで、なぜだかほっとする。自分が手に入れなくとも、

その本があるいうだけで、ほっとする。そんな感じだ。

 そこにあるだけで安心するので、いつか、と思いながら、なかなか

買わないことが多い。でも、いつかは買う。必ず、買う。と思っているうちに、

本が棚から消えていることがある。誰かが買ったのだろうか。

返本されたのだろうか。まさか万引きされちゃったんじゃないだろうな。

 消えてから、あわてはじめる。永遠に、私だけのために、その棚に

いてくれると思っていたのに。いつまでも、じっと待っていてくれると

思っていたのに。それなのにいなくなってしまった。どこへ。誰のもとへ。

 かけがえのないものを失った気分である。その本が好きだった。しかし

それ以上に、好きな棚にその本があるという状況が、好きだったのだ。

他の店の、知らない棚にあったなら、同じ本でもそこまで執着しないだろう。

(「本屋さんで」本文より)


 本好き、本屋好きのみなさんならば、思い当たるふしがあるはず。

かくいう不肖店主にも、いろんな本屋さんにお気に入りの本棚があります。

もちろんFabulousの店内にも。


こちらは単行本版で現在絶版となっております。

信販売もさせていただきますので、

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69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。