女医スコーフィールドの診断

今日のおすすめ本。

2016年2月10日はこちらです。


『復讐法廷』

ヘンリー・デンカー著 中野圭二訳 文春文庫


 ライカーズ島拘置所の狭い面会室のドアを開けたベンは、強烈なたばこの臭いに

思わずたじろいだ。つんと鼻をつく煙がそこにとぐろを巻いて居すわっているかの

ようだった。多くの弁護士や不安におののく未刑囚たちが、この部屋で数知れぬ

たばこを吸いながら、弁護の協議をし、戦術を練ったのだ。ベンは廻りの薄緑色の

壁を見た。未刑囚たちが社会や刑務所のやり方や世間一般に対する恨みつらみを

書き連ねた落書きのあとが、完全に消しきらないで筋になって残っていた。

 彼は小型の黄色い松材のテーブルに書類かばんを乱暴に置き、背もたれの

まっすぐな椅子に体をすべりこませた。いよいよ新しい依頼人との最初の面会だ。

書類かばんから取り出した起訴状の写しと事件を報じた新聞で見た顔写真を

除いては、デニス・リオーダンについてはまったく何も知らなかった。写真から

判断する限りでは、これといった特徴は何もないようにみえた。普通の人間の

なかでも一番普通だとみなされるだろう。

(中略)

 書類かばんから黄色い大判の綴じた罫紙を取り出しているとき、ドアが開いた。

ベン・ゴードンはデニス・リオーダンに挨拶をするためにそちらを向いた。

リオーダンは戸口で立ち止まった。

 まっ先にベンが思ったのは、写真のとおりだということだった。背丈は普通で、

体つきは六十代にしてはがっちりしていた。頭は白くなりかかり、特徴のない顔を

していたが、ただあごの線がくっきりしていて意思が強そうだったし、水色の眼も

澄んでいて、鋭く射抜くような光を帯び、露骨にうさん臭さを表していた。

一歩も退かない構えで、ベンをにらんでいる。

「がきか」リオーダンは言った。

(本文より)


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