あの川のほとりで

今日のおすすめ本。

2015年1月31日はこちらです。


『ピギー・スニードを救う話』

ジョン・アービング著 小川高義



 灰色まじりのトマト色というべき赤いツードアセダンである。一九六九年型。

真っ黒なセンペリットのラジアルタイヤ、標準の四速トランスミッション

四気筒、ツーキャブレター。いままでに四万五二三八マイルを走った。

ラジオはない。そんなものがあったら人間も車も気が散っていけない、

というのがドライバーの感覚だった。

 ヴァーモントを出たのは真夜中だった「夜明けにはペンシルヴァニアだ!」と、

ドライバーは心細げなボルボに言った。


 ニューヨーク州トロイで、ドライバーは小まめにシフトダウンしながら、

もうすぐだからなとボルボをなだめてやった。「もうじき楽に行けるさ」

これをボルボは真に受けた。たまには夢を見させてやるのも必要だ。

 西へ行く高速州道の入口で、ほとんど交通量はなかったが、もの慣れない

フォルクスワーゲンが一台、どの車線にいこうか決めかねているようだった。

軽く追いついたドライバーは、うしろからボルボに警笛を鳴らさせた。

泡を食ったフォルクスワーゲンが右へ振ったので、その左側をボルボ

猛然と追い越してから、思い知らせるように割り込んでおいて、

テールランプを点滅させた。

 ボルボが気をよくした。

(「もうすぐアイオワ」本文より)


不肖店主と同い年のボルボ氏。

ドライバーならすとも一目惚れ。

まごうことなき別嬪であります。



こちらは初版本で現在絶版となっております。

信販売もさせていただきますので、

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日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。