アメリカの夜

復活からの復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年11月17日はこちらです。


ABC戦争

阿部和重著 新潮文庫


 黒黒とした樹木のシルエットがざわざわという音をさせながら

ゆったりと横にゆれている森のなかへはいって五百メートルほど

坂道をくだってゆくと行き止まりに平屋建の古びた一軒家があり、

一台のワゴン車が置き捨てられたようにあるだけの駐車用の

空き地に車をとめたゴトウが上着のポケットに携帯電話をつっこんで

降りてきたのにつづいてドアを開けてジュンコが降りてくると

強い風のためにスカートがはためき、そのはたはたという

衣のゆれ具合をたしかめるようにじっとみつめて彼女のそばにちかづ

きすっと肩を抱き寄せて身体を建物のほうへむけさせそちらを指さし、

地味なところだろ、とゴトウが口にし、ジュンコの反応をうかがおうとすると、

玄関のドアがギイイという音をさせて開きなかから猟師の態をした

年恰好は六十すぎといった感じでひょろっとした体格の男がでてきて、

顔の奥ひっこんだビー玉のような眼を見開き親しげでもないが

とくに驚く様子もない視線をふたりにぶつける。

「なんだ、いたのか」

 ゴトウが、これもまた親しげでもなくとくに驚きもせずにいうと、

その猟師姿の男はその場から動かずに、ああ、とつっけんどんにこたえる。

「ひとりか」

「いや・・・いつのまに娘なんかできたんだい?旦那」

(「公爵夫人邸の午後のパーティー」本文より)


こちらは現在絶版となっております。

信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。


69fabulous@gmail.com

日々のおすすめ本から、

お気にいりの一冊が見つかりますように。

今日も明日も明後日も。

ごきげんよくお過ごしください。