オウエンのために祈りを

今日のおすすめ本。

2016年1月22日はこちらです。


『158ポンドの結婚』

ジョン・アーヴィング著 斎藤数衛訳 サンリオ刊


 ベンダーは長い白い実験衣を着て構内を歩いていた。顔がその実験衣と変わらない

くらいに白く—髪の毛は短く、赤っぽいブロンドで、顔にはトウモロコシの毛の

ようなあごひげが六、七本、ぱらぱらと生えている。彼はひげを週に一度剃るのだが、

いつもその六、七本の毛を一本剃る間に切り傷をつくってしまっていた。目は

冴えない色のブルーで、分厚いレンズの太い黒ぶちの眼鏡をかけている。一見すると、

何十年も前から続いている有力な農家の息子という感じだが、優秀な遺伝子学の学生に

見えないことない—偉大なショウォルタ—が彼を弟子として気に入っていることは

確かだが—しかし、僕にはこれまでお目にかかったこともないような鈍い若者に見えた。

 セイヴァリンは自分がこの若者のレスリング相手になるしかないと決めた。

彼はこれまでもチームのレスラーたちとトレーニングを続け体調は崩さずにいたが、

完全な練習試合はチームの誰ともしたことがなかった。それでも力はまだ充分あり、

今でも、ある級ではチームのほとんどの者を負かすくらいの力はあった。往時の

百五十八ポンド級のウェイトに戻すには頭一つは切り落とさなければならなかったが、

毎日走ったり、競争用自転車を走らせたり、ウエイト・リフティングは続けていた。

だが、それでもベンダーとは勝負にならない。ベンダーとは—十年以上も前、相手を

完敗させていた現役時代の自分でも—勝負にならなかったであろうと思っている。

しかし、今は八月でほかに誰もいない。九月になってほかのレスラーたちが学校に

戻ってきても、彼らがベンダーのコンディショニングに追いつくことは無理だし、

まして彼のクラスになることは無理だろう。

 レスリング部屋が八月でもどうにかがまんして使える時間というのは、陽が天窓から

射しこんでマットが焙られ、部屋がサウナ風呂に変わるまでの早朝に限られる。

ところが、ベンダーは遺伝学の実験で早朝から実験室につめ、ほとんど昼近くまで

ショウォルターとの研究が続くのだ。

 セイヴァリン・ウィンターは正気でいられなくなった。

(本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。

信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。



The Birthday LIVE DVD / Blu-ray

『LIVE AT NIPPON BUDOKAN 2015“GOLD TRASH”』


入荷いたしました!!

オリジナル限定特典としてB3サイズのポスターをおつけしております。


『GOLD TRASH』『BLOOD AND LOVE CIRCUS』に引き続き、
チバさんが自らアートワークを手掛けてくださいました!


特典ポスターは残りわずかです。

ぜひお早めにどうぞ!!

http://d.hatena.ne.jp/fabulous69/20160113