今日のおすすめ本。
2016年1月15日はこちらです。
『大泥棒と結婚すれば』
ユードラ・ウェルティ著 青山南訳
ロザマンドはほんとうに美しい金色の髪の女の子だったが、歌声がうるさいと
言われて、継母に部屋に閉じこめられていた。それでも、ロザモンドはなお歌を
うたった。歌をうたっていれば、時の過ぎるのもまるで気にならないからだった。
その歌はこんなふうに始まっていた。
月は明るくかがやいて、澄んだ光りを投げかける
「ようこそ、いいひと、いとしいひと！
あなたを愛しつづけた七年間
もう会えないと、なんどあたしはおもったことか」
すると、かれは彼女を両腕に抱きしめて
頬に、顎にとキッスを浴びせた
二度、三度、娘にキッスをあたえると
ふたりは双子のように体を離した
ロザモンドがこの愛の歌の終わりまでゆかないうちに—とはいっても、
この歌はそもそもとても長い歌だったが—サロミーがドアの鍵をあけた。
その姿は、まるで、年老いた黒ムクドリだった。
「おい、これ」とサロミーは言った。「スープに入れるのに新鮮な香料が
ほしいんだよ。森の向こうの藍の畑のまた向こうの、とびきり大きいのが
生えてるから、それを摘みにいっとくれ。エプロンいっぱいになるまで、
戻ってくるんじゃないよ」
（中略）
すると、ロザモンドは、「わかったわ、おかあさん」と言って、のろのろと
薄いブルーのガウンを着ると、リボンで髪をしばり、お弁当の小さな
トーモロコシパンを自分で焼き、探検にでかける用意をした。
「香料をとらずに帰ってきたら、首をへし折ってやるからね」と、継母は言った。
「さ、さっさとおゆき！」
（本文より）
こちらは初版本で現在絶版となっております。
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