今日のおすすめ本。
2014年9月10日はこちらです。
『漢字』
ことばの終りの時代に、神話があった。そして神話は、古代の文字の形象のうちにも、
そのおもかげをとどめた。そのころ、自然神々のものであり、精霊のすみかであった。
草木すら言問うといわれるように、草木にそよぐ風さえも、神のおとずれであった。
人々はその中にあって、神との交通を求め、自然との調和をねがった。そこでは、
人々もまた自然の一部でなければならなかった。
人々は風土のなかに生まれ、その風気を受け、風俗に従い、その中に生きた。
それらはすべて、「与えられたるもの」であった。風気、風貌、風俗のように、
人格に関し、個人的と考えられるものさえ、みな風の字をそえたよばれるのは、
風がそのすべてを規定すると考えられたからである。自然の生命力が、最も普遍的な形で
その存在を人々に意識させるもの、それが風であった。人々は風を自然のいぶきであり、
神のおとずれであると考えたのである。
(本文より)
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