私の東京物語

今日のおすすめ本。

2014年4月5日はこちらです。


『懐かしい人たち』

吉行淳之介著 講談社


 古い名刺を調べていると、『モダン日本記者 澁澤龍雄』と

いうのが出てきた。

「そうだった、あのころ毎日のように一緒に酒を飲んでいたのは

澁澤龍雄で、龍彦はまだ存在していなかった」

 と久しぶりに思い出した。(中略)

 二十三年春、浦和高校文科を卒業して東大仏文科の入学に失敗した

澁澤龍雄は、浪人のあいだ新太陽社でアルバイトすることになった。

そして「アンサーズ」に配属されたから、吉行編集長の部下になった

わけだ。彼はいつまでも異様に若かったから、いつ会ってもその頃と

変わらないようにみえたし、声の嗄れ方も同じだった。(中略)

 澁澤龍雄は気を許したとみえて、五十枚ほどの小説を私に渡し、

読んでくれ、と言った。習作の域のものだが、才能を感じた。(中略)

サディズムの気配の濃い作品で、いささか意外だった。平素のつき合いでは、

そういう気配は感じられなかった。むしろ人並みにロマンチックで、

女性に対しては初心で不慣れで、ほほえましいくらいのところがあった。

(「昭和二十三年の澁澤龍彦」本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。
 
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日々の“おすすめ本”から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。



The Birthday NEW SINGLE

『くそったれの世界』

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