今日のおすすめ本。
2014年3月22日はこちらです。
『聖なる血』
トマス・F・モンテルオ—二著 中原尚哉訳 扶桑社ミステリー刊
次の瞬間、不快なめまいの波が押し寄せた。これまでに感じたことのないほどの
強烈な吐き気におそわれた。なにかが胃を焼き、爪を立てているようだ。(中略)
ふいに鼻腔で、墓場にたちこめる甘くえぐい刺激臭がはじけた。それは万物の
終局、腐敗と堕落、不潔のきわみをしめす、暗く強烈な悪臭だった。エティエンヌは
みずからの魂の下に深い裂け目がひらき、その闇で悪臭が嵐のように荒れ狂うのを
感じた。薔薇も庭もその他の世界も、目もくらむ速さで四方八方に遠ざかっていく。
時の果てのまったき無のなかを、エティエンヌはひとり漂っていた。
(本文より)
こちらは初版本で現在絶版となっております。
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