自分はミステリのどこに惹かれるのだろう。
そんなことをつらつらと考えておりましたところ、
ひとつの結論に思いいたりました。
ズバリ、雰囲気。
みなさんの落胆した顔、
遠ざかっていく後ろ姿が目に浮かぶようですが、
気にせず続けることにいたしましょう。
名探偵がどれだけ難事件を解決したところで、
やっぱりその舞台設定が魅力的じゃないと、
ちっとも胸踊りません。
せめてミステリの中だけでも、
日常とはちがう世界に連れていってほしいのですよ。
というわけで。
久々に本の紹介をさせていただきます。
幻想小説家の刀城言耶を主人公にしたシリーズの短編集。
5編の短編が所収されていますが、
どの作品も謎の提示のさせ方が実に達者なのですね。
読み始めてすぐ、物語へと引き込まれます。
さながら立ちのぼる妖気に搦めとられるかのごとく。
謎が解かれた後も澱のように残る、
怪異の余韻も素晴らしい。
刀城言耶シリーズは最新長編である、
『幽女の如き怨むもの 』も発売されましたので、
ぜひそちらも併せてご一読ください。
ここではないどこかへに連れていってくれることでしょう。
