復活!!!
今日のおすすめ本。
2017年11月26日はこちらです。
『女の一生』
青年はいかにも美男らしい気取った顔つきを崩さずにいたが、
少女は、とつぜんの感動に息がつまり気が遠くなりそうで、
歯が音を立てて鳴るほどわなわな震えはじめrた。しばらく前から
彼女の頭について離れなかった夢が、いま突如として、
一種の幻想のなかに、現実の姿をとって現れたのである。
人々は婚礼のうわさをしていた。司祭がすごそこにいる。
白衣の人々が口々に祈祷を唱えているではないか。
婚礼させられるのは自分ではないのか?
少女は指に神経の鼓動を感じたのだろうか?少女のこころの
なやみが血管に沿うて走り、隣りに立っている男の心臓まで
伝わったのであろうか?彼は了解したのか?推察したのか?
少女と同じように恋の陶酔といったものにおそわれたのか?
それとも単に経験からどんな女でも自分には抵抗しないということを
知っていたのであろうか?少女はとつぜん。相手が力を入れて
自分の手を握っているのに気がついた。初めはそっと、
それからだんだん強く、もっと強く、砕けるばかりに。と思うと、
顔色ひとつ動かさず、誰にも気づかれずに男はこういった。
しかり、はっきりとこう言ったのである。
(本文より)
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