無名戦士の神話

復活!!!

今日のおすすめ本。

2017年10月10日はこちらです。


『真冬に来たスパイ』

マイケル・バー=ゾウハー著 広瀬順弘訳 ハヤカワ文庫刊


「それは世界社会主義革命と呼ばれていました」その言葉は、いったん口に

出してみると、われながら大仰で、うつろにひびいた。オルロフは、リンの顔に

冷笑がひろがるのを目にするまでもなく、気恥ずかしさで顔が火照った。

(中略)

「それはいちばん初期の構想です。それをたずねたのはあなたでしょう*?」

オルロフはつとめて冷静に言った。「その構想が練られたのは一九二◯年代の

初めだったということを忘れないでください。当時、ソ連は、血なまぐさい内乱の

果てに誕生したばかりの国でした。デニキン、ヴランギール、ベトリューラ、

コルチャクらの白軍を打ち破り、自国の領土から外国の軍隊を追い払って、

レーニンの構想の次の段階 −つまり、世界革命の実現をめざしたのです。

しかし、世界革命はなかなか実現しなかった。フランス人は概して熱心な

共産主義者だったが、革命よりはむしろ食べ物やセックスに関心があった。

ドイツ人はあまりにも規律正しく、従順すぎた。イタリア人はムッソリーニ

新しいシーザーとみた。ただ、そんななかでイギリスだけは、革命の機が

熟しているようにみえたのです」

「イギリス人だけが?」リンはさも驚いたように眉を上げた。

「それはまたどうしてですか?」

(本文より)

こちらは初版本で現在絶版となっております。

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