ある婦人の肖像

今日のおすすめ本。

2016年1月27日はこちらです。


『ねじの回転』

H・ジェイムズ著 蕗沢忠枝訳 新潮文庫


 それはある日の午後、あの“わたしの時間”のさい中に、とつぜん起きた。子供達は

寝室に引きあげ、わたしはぶらぶら散歩していた。いまこそ少しもはばかるところなく

述べるが。こうしてあてどなく歩いている時、いつもわたしの心にうかぶのは、

もしこんな時とつぜん誰かに出会ったら、きっと小説のようにすばらしいだろうな、

ということだった。誰かが不意に小径の曲り角に現われる。その人は、わたしの前に立って

微笑みかけ、わたしのことを好ましく思ってくれる。わたしはそれ以上を願わなかった。

—わたしは、ただあの方に知ってもらいたかった。そして、彼が知ってくれていることを

確かめる唯一の方法は、彼の美しい顔にそのしるしの優しい光を見ることだった。

 それが、そっくりその通り、わたしの前に現れた—というのは、顔のことだが—

初めて見たのは、ある長い六月の日も暮れかかった頃、わたしが木立ちの一つを通り抜け、

邸の見えるところへ出て立ちどまった時だった。わたしはその場にハッと立ちすくんだ。

—何を見ても、これほどびっくりことはない。—わたしの空想が一瞬にして現実と化したと

感じたからだった。あの方が立っていらっしゃる!—でも芝生の向こうの、高い塔の上に、

あの初めての朝、小ちゃいフローラがわたしを案内してくれた、あの塔のてっぺんに。

(中略)

 でも、その姿がたそがれの光りにくっきり照らし出された時、わたしはギョッと

二つの別な感情に打ちのめされた。最初の驚きと、二度目の驚きとが、ハッキリ別々の

ショックを与えたのだ。

 その二度目の驚きは、最初の驚きが間違いだったことを知った衝撃だった。

わたしの見た男は、最初とっさに思いこんだあの方ではなかったのだ。

(本文より)


昨日の『丘の屋敷』に続いて、こちらの作品も映画化されております。


幽霊映画の大傑作。

らしいのですが、なにぶん怖がりなもので観られそうにありません。


『回転』 ジャック・クレイトン監督


こちらは表紙ちがいとなっております。

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日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。



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